『アイドルマスター』というコンテンツは非常に様々な派生作品を持っています。
今回紹介する『アイドルマスター ミリオンライブ! シアターデイズ』、通称『ミリシタ』もそのひとつ。
元々はGREEをプラットフォームとして配信されていた『アイドルマスター ミリオンライブ!』(2013年2月配信開始・2018年3月配信終了)、通称『ミリマス』や『グリマス』が前身となっています。
本家アイマスのアイドルたちと同じ765プロ所属という設定で、その点で346プロという別プロダクションの設定だったデレステなどとは一線を画しています。
また、何かと他のアイマスのアイドルたちと比較される場面が多く、決して評価されていないわけではなかったものの、1番手や2番手としては考えづらいというのが正直な話でした。
ミリマスがカオスなイベントで有名になりながらも、結局は配信終了してしまったのは、独立したコンテンツとしての牽引力が他のヒットタイトルほどではなかったと言えるかもしれません。
しかしながら、新しく始まったミリシタはイベントや良い楽曲を重ね、徐々に評価を上げていきました。
そうして、今や古くからいるプロデューサー、すなわちプレイヤーたちからも絶大な信頼と支持を集めるようになっています。
それは、彼女たちが765プロの一員として認められ、元祖アイマスのメンバーと同一の世界に生きている設定が受け入れられたことも示していました。
ここまで評価を向上させたミリシタとはどのようなゲームなのでしょうか?
その点を中止に、ご紹介していきましょう。
『アイドルマスター』のおいしさがギュッと詰まったタイトル
ミリシタの登場アイドルは全部で52人。
彼女たちは皆、芸能事務所の「765プロ」に所属するメンバーで、本家アイマスの13人を含む数となっています。
つまり、13人の原初のメンバーと、39人の新顔という形。
こうした背景があることから、登場当初には本家アイマスの「765プロを支えた面々」と比較されてしまうのは避けられませんでした。
事実、おかしな競合を起こさないために、39人のほうは「後輩アイドル」という形で、本家の面々によって牽引される立場に設定されています。
新しく入ったメンバーが受け入れられるまでには、長い時間と努力を要します。
これはリアルのアイドルを見ていればよくよくわかることで、メンバーの加入や卒業によって、ファンは都度複雑な思いに囚われ、中には応援をやめてしまう人も存在するのです。
重ねて申し上げますが、新顔が大手を振って「先輩」たちと渡り合うのは実に大変。
自らの実力を証明しつつ、その人格や性格が強く好まれるものでなくてはなりません。
何しろ同じアイドルグループに所属しているという看板を背負うのです。
その品質を下げるわけにはいきません。
若くしてプロフェッショナルとしての覚悟を要求される、非常にしんどい運命です。
それこそがアイドル、ひいてはキャラコンテンツの妙味であり、業であるとも言えるでしょう。
ミリシタのアイドルたちは、もともとミリマスでその辛苦を味わってきました。
そういう意味では、ミリシタの開始時点ではある程度は受け入れられていたと言えます。
アイドルマスターという看板の効果はあったにせよ、2017年4月末からの事前登録には100万人以上が殺到した事実からも、その期待の高さが伺えるでしょう。
その期待に、彼女たちは応えた。
これがすべてです。
とてつもないストレスが掛かっていたと思います。
それはアイドルと、その魂を担当する声優さんたちだけでなく、関係者すべての人生をかけた勝負でもあったでしょう。
ですが、非常にわかりやすいインターフェース、音楽ゲームとしての質の高さ、ハイクオリティな3Dモデリング……いずれも「ミリオンヒット」となるのにふさわしい出来栄えでした。
ミリシタはまた軌道に乗った後も常にユーザーファーストで運営を続け、新曲などの展開もスピーディーであることが、アイマスコンテンツの中でもとびきり輝ける位置にたどり着いた要因と考えられています。
会議室から東京ドームまで駆け上がった「リアル成長譚」
何より、『アイドルマスター』という巨大なコンテンツの成り立ち、加えてそこからの成長についてライフワークとして取り組んできた人たちの存在が、一個の大いなる「ビルドゥングスロマン」を形成しています。
少女たちは、初めから成功者ではなかった。
古くからアイマスを知っている人ほど、アイドルたちとその関係者の皆さんがあまりにも苛烈な現実に直面し、挫折さえも経験しながらも、必死で前へと歩み続けてきたことをわかっています。
今でこそ人気タイトルとなったアイドルマスター。
その始まりは2005年。ナムコのアーケードゲームとして産声を上げました。
決してきれいではない3D。最高のエンディングを見るためには1周1万円はかかる設定……。
それでも、そのゲームに愛と未来を感じた人々は、しっかりとプレイを続けました。
早くからリアルとのメディアミックスの可能性にも活路を見出し、声優さんたちによるライブも開催。
ただ、その始まりはビルの会議室。
上手ではない歌。垢抜けない声。たどたどしい進行。
彼女たちと、それを支える彼らは、それでも、第一歩を踏み出しました。
そして、5年、10年、15年と過ぎて。
ゲームの中でたどり着いたように、リアルのほうでもたどり着いたのです。
「ドームをお客さんで埋め尽くす最高のライブ」という晴れ舞台に。
会議室で地下アイドルよりもキツイライブを行っていたところから、必死にトレーニングをし、ついにはドームや武道館で晴れの公演を行うまでに。
アイドルマスターは、真実の成長の物語だったんだ。
人生の多くをともに歩んできた人々は、ともにその道のりを思い、涙を流しました。
また、こうしたエピソードが最近始めた層、加えて名前くらいしか知らない層へも届き、「そんなに素敵なコンテンツなんだ」と心を響かせます。
さながら共鳴や共振。波紋が波紋を作るように、次々にファンが増えていくのです。
まさに生きた映画。心に直接触れてくる成長の物語です。
豊かな関係性で構築される世界観が絶品
ゲーム内における会話イベントは「コミュ」という単語で表現されます。
これはアイドルマスターシリーズにおいては基本的用語なのですが、ミリシタはこのコミュが抜群に上手く、実際に評判も良いのです。
アイマスシリーズはどれもコミュが上手いながら、ミリシタは特に関係性の描写とライブの裏側、すなわちレッスンの空気感の表現に長けています。
そうした上手さでもって、物語の中に置けるひとつの小物語を構築するので、ユニット単位でのファンが多い点も特徴と言えるでしょう。
はい、ミリシタは765プロが運営する劇場を中心として話が展開するのですが、そこを拠点とする所属アイドル52人は、それぞれ組み合わせによってユニットを結成しています。
どういった感じか、並べてみますね。
・フェアリースターズ
・エンジェルスターズ
・プリンセススターズ
・夜想令嬢-GRAC&E_NOCTURNE-
・Cleasky
・トゥインクルリズム
・EScape
・閃光☆HANABI団
・D/Zeal
・STAR ELEMENTS
これらはいずれもミリシタになってから生まれたユニットで、かつすべてではありません。
また、その他の投票によって誕生したユニットなどはさらに多く存在するので、まさしく「ユーザー参加型の夢の組み合わせ」がいくつも存在することになります。
まさしく「プロデューサー」として、プレイヤーたちはかわいいアイドルたちを輝かせる瞬間を待ち望み、訪れた好機を逃すまいと活動ができるわけですね。
そういう意味では、双方向性も有しているゲームと言えるでしょう。
XBOX360で本家がリリースされたころからそうでしたが、アイマスはファンを自らのプロジェクトに参画させる上手さを感じます。
アイドルたちを育てるのは貴方たちなのだ、と呼びかけているかのようです。
そうして、数多いアイドルたちを、コミュの中で上手く輝かせる。
これは現場スタッフ、とりわけシナリオライターの皆さんの手腕の賜物ですね。
アイマスシリーズの中でも、ミリシタのテキストは「アイドルがアイドルである意味」に強く触れているため、抜群に「存在感」を覚えさせてくれます。
プレイヤーはレッスンに付き合い、時には一緒に悩み、励まし合い、公演の本番へと向かっていく。
その一連の過程が、読む人に実感を与える。
「感動」という単語がありますが、受け手の感情を揺り動かす点で、まさしくミリシタは感動を生むゲームであると言えます。
その感動が次元を飛び越え、リアルにも影響を及ぼす。
言ってしまえば、ミリシタは生活の一部にもなる。
決して時間を浪費するだけではない。
前向きな人生を送る手段としてのゲームという考え方は、令和に入った日本にとって、また個人主義と無国境主義で揺れる世界にとっての主流になっていくかもしれません。
泣こう、笑おう、そこにいるアイドルたちとともに
かくして、プレイヤーはいつも担当アイドルと苦楽をともに、時は泣いて、時には笑って、多くの思い出を共有します。
その営みはどこまでも続くとともに、出会うたびに輝きを増していく。
「男子三日会わざれば刮目して見よ」
このような格言がありますが、女子もまた三日会わないだけで劇的に変化する。
ましてや数ヶ月離れていたら、クラスメイトだった女の子が国民を熱狂させるアイドルにまで進化する。
そういう驚きを提供してくれるのが、アイマスであり、ミリシタであると言えるでしょう。
もしも日々の生活に疲れ、熱狂するという行為そのものを忘れてしまっているなら、ぜひこのゲームに触れてみてください。
ログインするだけで、かわいいアイドルから声をかけてもらえる。
最初は、「だから何だ」と思うかもしれません。
けれど、続けているうちに、新しい日常が訪れていることに気づくはずです。
人は変われる。
たとえ会議室でしか歌えないようなアイドルでも、やがては武道館を埋め尽くす大いなるアーティストになれる。
何度でも、その事実をお伝えしたい。
それがどういう理由なのか、実際に触れてみることで理解できる部分はあると信じています。
きらめくステージは、いつでもそこで待っていてくれます。